メーカー研究職のメリット・デメリット|実際に働いて感じたこと

働き方・生き方

研究職は、仕事内容だけを見れば魅力の多い仕事だと思います。専門分野に打ち込める、自分の手で実験を組み立てられる、成果が製品につながる。就職や転職を考えていたときの自分も、そうした面に惹かれていました。

ただ、結婚し、子どもが生まれ、家庭を持つようになってから、仕事内容だけでは見えていなかった条件がいくつも出てきました。この記事では、メーカー研究職として実際に働いて感じたメリットとデメリットを、独身のときには気づかなかった視点も含めて整理していきます。

メーカー研究職で働いて感じたメリット

毎月の給与があり、収入の見通しを立てやすい

会社員として研究職に就くと、短期的な研究成果だけで収入が決まる働き方ではなく、毎月の給与を得ながら研究に取り組めます。

これは「研究職なら高収入」「メーカーなら安泰」という話ではなく、企業や業界、会社の規模によって待遇はかなり異なります。ただ、家庭を持つようになると、来月・来年の収入をある程度見通せることは、それ自体がメリットとして感じられるようになりました。

会社員としての信用を得やすいと感じた

住宅ローンや賃貸契約など、勤務先や雇用形態を説明する場面で、メーカーの正社員として働いていることが役立った実感があります。ただしこれは、研究職という職種そのものというより、会社員として継続的な給与収入があること自体による部分が大きいと思います。

専門分野を仕事として深く扱える

文献を調べ、実験を組み立て、データを分析し、結果をまとめるという一連の流れを、日々の仕事として積み重ねられることも、研究職ならではの側面です。短期的な数字だけでなく、中長期のテーマに関われる場合があるのも、会社によっては魅力になり得ます。もちろん、テーマの裁量や期間は勤務先によって差があります。

メーカー研究職で働いて感じたデメリット

実験があるとテレワークだけでは完結しにくい

研究職の業務には、文献調査、データ解析、報告書作成、資料作成、オンライン会議など、在宅でもできるものがあります。一方で、実験、装置の操作、サンプル作製、試作、設備を使った評価などは、研究所や実験室に行かなければできない場合が多くあります。

「研究職はテレワークできない」というのは正確ではありません。正しくは、実験を中心とする研究職では、完全に在宅だけで仕事を完結させにくい、ということです。データ整理や資料作成は自宅でもできますが、実験がある日は研究所へ行く必要があります。子どもの送迎や急な体調不良への対応、通勤時間、夫婦それぞれの出社日をどう組み合わせるかは、この「行かなければならない日がある」という前提のうえで考える必要があります。在宅勤務の時間に育児ができる、という話でもありません。

研究所の場所によって住む場所も制約されやすい

メーカーの研究所や工場は、勤務場所が限られることがあります。継続的に出社するなら、現実的に通勤できる範囲に住むことになります。

その結果、研究所の所在地が、住む場所を左右し、それが配偶者の通勤や保育園・学校の選択肢に影響し、家庭全体の生活設計にまで及んでいきます。「通勤が少し不便」で終わる話ではなく、住居選びの根本的な制約になり得るという点が、家庭を持って初めて実感したところです。

共働きでは夫婦の勤務地を両立しにくいことがある

夫が研究職の場合、「夫の研究所に通える場所に住む」ことだけを最適解にはできません。妻にも、勤務先、キャリア、出社の頻度、勤務時間、今後やりたい仕事があります。

特に妻のほうが収入が高い、あるいは妻がキャリア上大事な時期にある家庭では、夫の研究所の場所だけを基準に住居を決めることが、家庭全体にとって合理的とは限りません。夫の研究職を続けるために、妻が長時間通勤をする、勤務時間を短くする、転職する、キャリアを制限する、ということを当然の前提にはしたくないところです。かといって、「妻のほうが収入が高いなら夫が研究職を辞めるべきだ」ということでもありません。夫婦それぞれの仕事と生活を、並べて考える必要があります。自分だけなら許容できる通勤時間でも、夫婦2人分の勤務地を合わせようとすると、途端に選択肢が狭くなることを実感しました。

転職するときに業界を変えにくいと感じることがある

「研究職は異業種転職できない」というのも、正確ではないと思います。研究職では、特定の材料、製品、分析手法、製造プロセス、業界知識といった専門性が積み上がっていきます。同じ「研究職」でも、これまで扱ってきた材料や製品、顧客業界との距離が近いほど、経験を説明しやすいと感じます。逆に、業界が大きく変わるほど、「何を研究してきたか」だけではなく、「その仕事で何をしてきたか」まで分解して説明する必要があると感じます。

家庭を持ってから「研究所の場所」が大きな条件になった

独身のときは、研究所までの通勤時間は、多少長くても自分一人が我慢すれば済む話でした。ですが、結婚し、子どもが生まれると、話が変わってきます。

研究所の場所が住居を決め、住居が配偶者の通勤条件を決め、それが保育園や学校の選択肢を決め、送り迎えの分担にまでつながっていきます。「郊外にあって不便」という単純な話ではなく、家庭全体の働き方そのものが、一つの立地条件から連鎖的に決まっていく感覚がありました。転職や引っ越しを考えるときも、この連鎖をどこかで断ち切れるかどうかが、実は大きな判断材料になります。

「研究職が嫌」なのか「今の働き方が合わない」のかを分ける

デメリットを並べると、「研究職を辞めたほうがいい」という結論に飛びつきたくなるかもしれません。ですが、少し立ち止まって、何が合わないのかを分けて考えたほうがよいと思います。

研究そのものが嫌なのか、今の会社が合わないのか、勤務地が問題なのか、テレワークの制約が問題なのか、待遇が問題なのか、将来のキャリアが不安なのか、家庭との両立が難しいのか。これらは、それぞれ別の問題です。

たとえば、研究そのものは好きだが、研究所の場所が家庭に合わない。実験は好きだが、出社頻度が今の生活と合わない。今の専門分野には興味があるが、会社の将来性に不安がある。こうした場合、問題なのは研究職そのものではなく、「今の会社で研究職を続けること」が合わなくなっている、ということかもしれません。

研究職で身についた経験を一度分解してみる

研究職の経験は、専門分野そのものと、業界を越えて説明しやすい業務経験に分けて考えることができます。

専門分野に結びつきやすい経験業界を越えて説明しやすい経験
材料・製品の知識文献調査・情報整理
特定の分析手法仮説設定・実験計画
業界固有の技術知識データ整理・統計解析
製造プロセスの理解技術資料作成・プレゼン
顧客・用途に関する知識他部署との調整・プロジェクト進行

「研究職しかできない」と考えるのではなく、自分の仕事を分解してみると、別の見え方をすることがあります。この経験をどう活かせるかについては、メーカー研究員の経験を活かせる副業は?研究・技術職のスキルから考えるでも扱っています。

研究職を続けるか迷ったときに考えたい4つの方向

今の会社で研究職を続ける、研究職のまま会社や勤務地を変える、研究経験を活かして別の職種へ移る、研究とは異なる分野も含めて考える。この4つに優劣はありません。何が合わないのかを整理したうえで、自分と家庭に合う方向を考えてみてください。転職の選択肢を具体的に考えたい方は、メーカー勤務のパパが転職を考えたときの選択肢|経験を活かすか、異業種へ行くかも参考になると思います。

まとめ|研究が好きかどうかだけでは働き方は決まらない

メーカー研究職には、収入の見通しの立てやすさや、専門分野を深く扱えるという良さがある一方で、実験によるテレワークの制約、研究所の立地による住居の制約、共働きでの両立の難しさ、転職時の業界の壁といった、家庭を持って初めて実感する条件があります。

研究が好きかどうかだけでは、この働き方を続けるかどうかは決まりません。何が自分たちの家庭に合っていて、何が合っていないのかを、一つずつ分けて考えることが大切だと感じています。

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