家庭を優先しながらキャリアを築く方法という前回の記事では、転職を考える際に、年収以外の条件を重視するという選び方もある、という話に触れました。
今回は、その中でも特に「年収を下げてでも働き方を変える」という選択について、もう少し踏み込んで考えてみたいと思います。
なぜ「年収を下げる」という選択肢が視野に入るのか
妻の収入がある家庭では、夫の年収が今より下がったとしても、生活そのものがすぐに立ち行かなくなるわけではない、という状況が生まれることがあります。
これまでであれば「年収を下げる」という選択肢自体、検討の対象にならなかった方も多いと思います。ただ、家計全体で見たときに一定の余裕がある場合、残業の少なさや勤務時間の柔軟さ、通勤の負担の軽さなどを優先して、年収が下がる転職を選ぶという道が、現実的な選択肢として見えてくることがあります。
「年収を下げる」ことへの心理的な抵抗
一方で、年収を下げるという選択には、単純な金額の話では片づかない抵抗を感じる方も少なくないようです。
「男は稼ぐべき」という価値観を持っていなくても、これまでのキャリアや評価が年収という数字に結びついてきた方にとっては、年収が下がることが、自分自身の評価が下がったように感じられることがあります。
また、周囲からどう見られるか、という点が気になる場合もあります。「せっかくのキャリアをなぜ手放すのか」と聞かれることを想像して、選択そのものをためらってしまう、ということも起こり得ます。
年収を下げることで得られるかもしれないもの
年収を下げることは、当然ながら失うものもあります。ただ、それと引き換えに得られるものもあるはずです。
たとえば、子どもと過ごす時間、家事や育児に充てられる余力、心身の余裕などです。何にどれくらいの価値を感じるかは人によって異なるため、「年収を下げるべきだ」ということではなく、何を優先したいかによって、選択肢として浮かび上がってくるかどうかが変わってくる、という話です。
ここで大切なのは、「年収がいくら下がるか」だけでなく、「その年収と引き換えに何を得られるのか」まで含めて考えることです。
たとえば、年収が50万円下がる代わりに、残業が減って毎日1時間早く帰れるようになるとします。金額だけを見れば「50万円の年収ダウン」ですが、その代わりに年間で何百時間もの家族との時間が増えるのだとすれば、その選択をどう評価するかは人によって変わってくるはずです。
在宅勤務が増えて通勤時間が減る、子どもの送り迎えができるようになる、妻が仕事に集中できる時間が増える、といった変化が生まれることもあります。年収という一つの数字だけで判断するのではなく、何と引き換えになるのかまで含めて考えてみると、見え方が変わってくるかもしれません。
年収を下げる前に、一度整理しておきたいこと
年収を下げるという選択は、感情だけで判断すると、後になって想定外の負担につながることもあります。
たとえば、教育費や住宅ローンなど、これから先の支出の見通しも含めて、夫婦で一度話し合っておくことが助けになる場合があります。
また、今は妻の収入が高くても、その状態がずっと続くとは限りません。転職や育休、病気、介護など、さまざまな理由で夫婦どちらの収入も変化する可能性があります。「妻が稼いでいるから、自分の年収はいくら下がっても大丈夫」と単純に考えるのではなく、夫婦どちらかの収入が変化した場合にも家計を維持できるか、ある程度余裕を持って考えておく必要があります。
「今の気持ち」だけでなく、「数年先の生活」も視野に入れて考えておくと、選択への納得感が変わってくるかもしれません。
あわせて、「年収を下げてもいいか」だけでなく、「どこまでなら下げられるのか」を夫婦で確認しておくことも大切です。毎月必要な生活費や住宅費、教育費、貯蓄などから逆算すると、最低限必要な世帯収入もある程度見えてきます。
まとめ
年収を下げるという選択は、これまでの働き方の常識からすると、勇気がいる決断に見えるかもしれません。
ただ、妻の収入がある家庭においては、年収以外の何を優先するかによって、十分に検討に値する選択肢の一つになり得ます。
大切なのは、年収を下げること自体を目的にするのではなく、年収と引き換えに何を得たいのかを考えることです。家族との時間なのか、残業の少なさなのか、在宅勤務なのか、通勤時間なのか。人によって、何を優先したいかは変わってきます。
では、実際に転職するとき、年収以外の何を基準に仕事を選べばいいのでしょうか。
次の記事では、妻の収入が高い家庭で夫が転職するときに、年収より重視したい条件を具体的に整理していきます。
あわせて読みたい

