2人目の保育園入園に申し込みましたが、入れませんでした。
上の子がすでに保育園に通っているので、利用調整では兄弟に関する加点があります。加点がある以上、どこかには入れるだろう。申し込んだときは、そんなふうに考えていました。
結果は不承諾。
困ったのは、預け先が見つからなかったことだけではありません。保育園に入れないということは、予定していた時期に仕事へ戻れないということでもありました。
育休に入るときは、いつまで休むかをある程度決めます。半年、あるいは1年。その時期になれば保育園に預けて、また仕事に戻る。私も育休にはそんな「終わり」があるものだと思っていました。
ところが、その終わりは自分で決められるとは限らないようです。
東京都の保育園をめぐる数字を調べてみると、2026年4月の待機児童は前年から大きく増えていました。特に増えているのが1歳児です。
ちょうどその少し前、東京都では0〜2歳の第一子にも保育料無償化が広がっています。
この二つに関係はあるのか。そして、保育園に入れなかった家庭は、その後どうやって仕事に戻るのか。
自分が当事者になって、初めて気になりました。
兄弟加点があっても入れなかった
保育園の利用調整は、家庭の状況などをもとに自治体が行います。基準は自治体によって違います。
わが家の場合、上の子がすでに保育園を利用しているため、兄弟に関する加点があります。具体的な点数や自治体名はここでは書きません。
私はこの加点をかなり頼りにしていました。
もちろん「絶対に入れる」と言われていたわけではありません。それでも、入れなかった場合のことをほとんど考えていなかったくらいには、入園できると思っていました。
だから不承諾の結果を見て、保育園を探し直すことより先に「仕事はどうなるんだろう」と考えました。
復職するつもりで育休を取っているのに、その復職日を決められない。
保活を始める前には、あまり意識していなかったことでした。
東京都では0〜2歳の第一子も保育料無償化に
東京都では2025年9月1日から、保育料等の第一子無償化が始まりました。
3〜5歳は国の制度ですでに無償化されています。東京都の取り組みでは、これが0〜2歳の第一子にも広がりました。
保育園を利用する家庭にとっては、かなり大きな負担軽減です。
一方、その翌年の保育園をめぐる数字を見ると、別の変化も起きています。
待機児童は339人から1,113人に増えた
東京都が公表した2026年4月1日時点の待機児童は1,113人でした。
2025年4月は339人なので、1年間で774人増えたことになります。
年齢別に見ると、その増え方にはかなり偏りがあります。
| 年齢 | 2025年4月 | 2026年4月 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 0歳 | 25人 | 76人 | +51人 |
| 1歳 | 244人 | 928人 | +684人 |
| 2歳 | 55人 | 103人 | +48人 |
| 3歳 | 8人 | 4人 | −4人 |
| 4歳以上 | 7人 | 2人 | −5人 |
| 合計 | 339人 | 1,113人 | +774人 |
※東京都「都内の保育サービスの状況について」各年4月1日現在の公表値から作成。
目につくのは1歳児です。
244人から928人へ、684人増えています。待機児童全体の増加数774人のうち、約88%が1歳児でした。2026年だけを見ても、待機児童の約83%が1歳児です。
1歳前後は、育休から復職する時期として選ばれることもあります。
ただ、928人全員が「育休から戻ろうとしていた家庭」というわけではありません。東京都の資料には、そこまでの内訳はありません。
それでも、自分が復職と保活を同時に考える立場になってみると、1歳児にこれだけ集中している数字は気になります。
保育料無償化の影響なのか
第一子の無償化が始まったのは2025年9月です。その約7か月後、待機児童は339人から1,113人になりました。
これだけを見ると、「無償化で保育園を利用したい家庭が増えたのでは」と考えたくなります。
東京都も同じ疑問を想定していたようで、公式Q&Aに「待機児童が増えたのは第一子保育料無償化の影響ではないか」という項目があります。
都の説明では、無償化によって保育所等を利用しやすくなることは期待されるものの、保育ニーズが増えた背景には出生数や共働き世帯の増加など複数の要因があるとされています。
こども家庭庁が自治体に行ったヒアリングでも、第一子無償化による需要増加の影響を挙げた都内自治体がありました。その一方で、想定を上回る申込み、地域による需要の偏り、定員や保育人材の問題なども挙げられています。
今ある資料だけで、「無償化のせいで待機児童が増えた」と結論づけるのは無理があります。
ただ、今回自分が保育園に入れなくなって、保育料と保育の受け皿は分けて考えなければいけないのだと感じました。
いくら保育料が安くなっても、空きがなければ利用できません。
「待機児童1,113人」は、落ちた人全員の数ではない
もう一つ、調べるまで勘違いしていたことがあります。
私は「待機児童」を、保育園に申し込んで入れなかった子どもの数に近いものだと思っていました。
実際の集計方法は違います。
こども家庭庁の定義では、保育所等への申込みをしていても、特定の園だけを希望している場合や、求職活動を休止している場合など、一定の条件に当てはまる人は待機児童から除かれます。育児休業中の人についても条件があります。
2026年4月時点で、全国の待機児童は2,435人でした。
一方で、この数字だけを見ても「希望した保育園に入れなかった家庭」がどれくらいいるのかは分かりません。
統計上の待機児童と、実際に保活をして「入れなかった」と感じている家庭は、完全には一致しないからです。
私が知りたいと思ったのは、むしろその先でした。
入れなかった人は、その後どうするのだろう。
特に、仕事へ戻る予定だった人はどうするのだろう。
戻るつもりだったのに、戻れない
育休を延長すること自体が嫌なわけではありません。
子どもが小さい時期に一緒にいられる時間は限られています。育休が延びれば、その時間が増えることになります。
でも、それだけでは割り切れないものもあります。
もともとは仕事に戻るつもりだったからです。
「○月から復職する」と考えていれば、そこに向けて少しずつ生活も気持ちも変わっていきます。
その予定が、保育園の不承諾によってなくなる。
自分から育休を延ばすと決めたわけでもなく、仕事を辞めたわけでもありません。次にいつ入園できるのかも分からない。
この状態をどう表現すればいいのか考えましたが、「宙ぶらりん」という言葉が一番近い気がします。
仕事に戻りたいなら、子どもと一緒にいたくないのか。
もちろん、そんなことはありません。
子どもと過ごせるのはうれしい。それと同時に、仕事から離れる期間が予定より長くなることには戸惑いもある。
二つの感情は、普通に同居します。
父親にとって、復職は「休みが終わる日」だけではない
この感覚が自分だけのものなのか気になって、父親の復職について調べてみました。
父親に関する研究は、母親の産後や復職を扱った研究ほど多くありません。
それでも、父親になる時期には、それまでの自分と父親としての自分との間で調整が起きることが分かっています。
2018年のシステマティックレビューでは、初めて父親になった男性を対象とした22研究が分析されています。そこでは、新しく父親になったことで生まれるアイデンティティの変化、複数の役割の競合、不安やストレスなどが報告されていました。
仕事への復帰に絞った研究もあります。
2023年に英国で行われた研究では、第一子が生まれたあと仕事へ戻った12人の父親にインタビューしています。
父親たちは復職の過程で、罪悪感や不確実さ、心理的な負担を経験していました。また、父親になったことで、それまでの「働く自分」に対する考え方が変わったという語りも出ています。
この研究を読んで、少し腑に落ちるものがありました。
育休から仕事へ戻るのは、単に長い休みを終えて出社することではありません。
父親になる前と同じように仕事だけを見ていればいいわけでもない。家庭で過ごした時間を経た自分が、もう一度仕事との距離を決めていくことになります。
ただし、この研究は英国で実際に復職した父親を対象にしたものです。日本で保育園に入れず、復職そのものが延期された父親を調べた研究ではありません。
だから、私の経験をこの研究だけで説明するつもりはありません。
むしろ気になったのは、研究の対象になっている「復職する父親」よりもさらに手前に、復職する準備をしていたのに、そこへ進めない父親もいるということでした。
育休を取ることばかり考えていた
男性の育休について調べると、「取得率」や「取得日数」という数字をよく目にします。
私自身も育休に入る前は、どれくらい休むかを考えていました。
でも今になって思うのは、育休には入口だけでなく出口もあるということです。
何か月休むか。
会社とどう調整するか。
そこまでは考えても、「予定していた日に復職できなかったらどうするか」までは考えていませんでした。
保育園に入れなければ、選択肢を考え直すことになります。
育休を延長する。別の預け先を探す。夫婦の働き方を変える。
どれを選ぶにしても、当初の予定にはなかった判断です。
だから男性育休について考えるとき、取得できたかどうかだけでは足りないのだと思います。
育休を取ったあと、希望した時期に仕事へ戻れるのか。
実際に育休を取ってみて、私はそちらの方も気になるようになりました。
保育料より先に、「入れるか」があった
東京都で0〜2歳の第一子まで保育料が無償になったことは、子育て家庭にとって大きな変化です。
一方、2026年4月の待機児童は1,113人。そのうち928人が1歳児でした。
無償化と待機児童の増加にどこまで関係があるのかは、今ある資料からは分かりません。
ただ、自分が保育園に入れなかったことで、以前とは少し見え方が変わりました。
保育料がいくらかかるのかを考える前に、まず入れるかどうかがあります。
そして入れなかった場合、その影響は保育園だけでは終わりません。
仕事へ戻る時期も変わります。
育休に入ったとき、私は「いつまで休むか」を考えていました。
今なら、「そのとき保育園に入れなかったらどうするか」も夫婦で話しておくと思います。
兄弟加点があれば入れるだろう。
そう思っていた私も、入れませんでした。
育休の期間は自分たちで決められても、その予定どおりに復職できるとは限らない。
今回の保活で、一番予想していなかったのはそこでした。
参考資料
東京都福祉局「保育料等の無償化について」
東京都「都内の保育サービスの状況について(令和7年4月1日現在)」
東京都「都内の保育サービスの状況について(令和8年4月1日現在)」
東京都福祉局「保育サービスの状況に関するQ&A」
こども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ(令和8年4月1日)」
Baldwin S, Malone M, Sandall J, Bick D. Mental health and wellbeing during the transition to fatherhood: a systematic review of first time fathers’ experiences. 2018.
Crying on the Bus: First Time Fathers’ Experiences of Distress on Their Return to Work. 2023.
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