妻のほうが自分より稼いでいると、
「夫として、自分ももっと稼いだほうがいいのだろうか」
「自分は家庭の中で何を担えばいいのだろう」
と考えることがあります。
反対に、
「妻のほうが稼いでいるなら、自分は仕事を抑えて家庭を優先したほうがいいのでは」
と考えることもあるかもしれません。
でも、どちらも「夫の役割を先に決める」という点では同じです。
夫だから仕事を優先する。
妻のほうが稼いでいるから夫が家庭を担う。
この二つだけが選択肢ではありません。
先に考えたいのは、夫が何をするかではなく、夫婦でどんな生活をしたいのかということです。
そのために必要な収入や時間、家事や育児を整理してから、夫婦それぞれが何を担うのかを考える。
この記事では、そんな順番で家庭の中での夫の役割を考えてみます。
収入の多い・少ないだけで夫婦の役割を決めない
「夫は家族を養うもの」という考え方では、夫が仕事を優先し、妻が家庭を多く担う形になりがちです。
では、妻のほうが稼いでいる家庭なら反対にすればいいのでしょうか。
妻が仕事を優先し、夫が家庭を多く担う。
一つの選択肢ではあります。
ただ、これでは役割を決める基準そのものは変わっていません。
「より多く稼ぐ側が仕事を優先し、そうでない側が家庭を担う」
という考え方のままだからです。
もちろん、収入は無視できません。
住居費、食費、教育費など、家族で生活していくにはお金が必要です。夫婦のどちらかが働き方を変えることで世帯収入が大きく変わるなら、家計への影響も考える必要があります。
ただ、家庭を成り立たせるために必要なのは収入だけでもありません。
子どもの送迎をする人も必要です。
子どもが熱を出せば、仕事を調整する必要があります。
食事や洗濯などの日常的な家事もあります。
だからといって、「収入が少ないほうが家事や育児を多く担当すれば公平」と単純に決めることもできません。
夫婦の収入差は、家庭の形を考えるための一つの条件です。
それだけで夫と妻の役割を決める必要はないと思います。
「誰が何をするか」より「どんな生活をしたいか」を先に考える
役割分担を考えるとき、
「夫は何をするか」
「妻は何をするか」
から話を始めると、どちらが何を負担するかという話になりやすくなります。
そこで、いったん役割から離れて、
「家族として、どんな毎日を送りたいのか」
から考えてみます。
たとえば、
「平日は18時半までに、どちらかが子どもを迎えに行けるようにしたい」
「子どもが熱を出すたびに、同じ側だけが仕事を休む状態にはしたくない」
「夫婦とも今の仕事を続けたい」
「平日の夕食を家族で食べられる日をつくりたい」
「子どもが小さい間は、仕事だけで一日が終わる生活にはしたくない」
といったことです。
ここで考えるのは、理想的な家庭像ではありません。
実際に毎日の生活をどう回したいのかです。
それが分かってくると、次に考えることも具体的になります。
18時半までの迎えが必要なら、その時間に動ける働き方が必要です。
夫婦とも仕事を続けたいなら、どちらか一人だけに送迎や急な呼び出しへの対応が集中する働き方では難しいこともあります。
一定の世帯収入を維持したいなら、それを実現できる仕事の組み合わせを考える必要があります。
「夫は何をするべきか」から考えるのではなく、まず生活の形を考える。
そのあとで役割を決めるという順番です。
「夫の役割」ではなく「家庭に必要な条件」に分けてみる
もう少し具体的にするなら、「夫の役割」を考える前に、その家庭に必要な条件を書き出してみる方法があります。
たとえば、次のように整理できます。
| 家庭で実現したいこと | 必要になりそうな条件 |
| 夫婦とも仕事を続けたい | 送迎や急な呼び出しを一方だけに集中させない |
| 平日に家族で過ごす時間を持ちたい | 夫婦のどちらか、または両方が一定の時間までに帰れる |
| 家計を安定させたい | 家庭として必要な世帯収入を確保する |
| 妻が希望するキャリアを続けたい | 妻の勤務時間や勤務地を踏まえて生活を組み立てる |
| 夫も仕事を続けたい | 夫の仕事やキャリアに使える時間も確保する |
| 子どもの急病に対応したい | どちらが対応するか、仕事をどう調整するか考えておく |
こうして見ると、「夫は仕事」「妻は家庭」といった役割だけでは家庭が動いていないことが分かります。
必要なのは、
「平日の夕方に動ける人」
「急な呼び出しに対応できる余白」
「生活を維持できる収入」
「夫婦それぞれが仕事を続けられる時間」
といった条件です。
そして、その条件を夫婦のどちらがどう満たすのかは、家庭によって変わります。
夫が送迎を多く担当する家庭もあれば、曜日によって分ける家庭もあります。
仕事の忙しい時期に合わせて、一時的に分担を変えることもできます。
役割を先に決めるのではなく、必要な条件を出してから分担を考える。
そうすると、「夫だから」「妻だから」「収入が少ないから」という理由だけで役割を決めずに済みます。
そのうえで夫婦それぞれがどう働きたいかを確認する
家庭に必要な条件が見えてきたら、次に考えたいのが夫婦それぞれの希望です。
特に妻のほうが現在の収入が高い場合、その状態が今後も続くことを当然の前提にしないことは大切です。
妻の収入が高いからといって、
「妻はこれからも今の会社で働き続けたい」
「今後も仕事を優先したい」
「現在の勤務地や勤務時間を維持したい」
と夫側が決めることはできません。
妻自身がどう働きたいのかは、妻本人にしか分かりません。
今の仕事を続けたいのか。
これから挑戦したい仕事があるのか。
仕事にどのくらい時間を使いたいのか。
勤務地をどう考えているのか。
まず、そうした希望を確認する必要があります。
同時に、夫自身の希望も後回しにする必要はありません。
夫の収入が妻より低いからといって、仕事やキャリアへの希望がないわけではありません。
どんな仕事を続けたいのか。
仕事にどのくらい時間を使いたいのか。
子どもとどのくらい過ごしたいのか。
どこで暮らしたいのか。
夫側にも考えたいことがあります。
大切なのは、現在の年収だけを見て、どちらかの希望を最初から消してしまわないことです。
特に夫が転職や勤務地の変更を考えている場合は、それによって妻の生活がどう変わるかまで考えておきたいところです。
夫の通勤が長くなった結果、妻が毎日送迎を担当することになる。
夫の転職に合わせて、妻が勤務地や働き方を変える。
そうしたことを当然の前提にせず、妻の仕事や希望への影響も含めて考える必要があります。
夫の働き方そのものについて考えたい場合は、「妻のほうが年収が高い家庭で、夫はどう働くべき?」でも詳しく整理しています。
また、夫自身が何を大切にしたいのか分からなくなっている場合は、「育休中に「これからどう生きる?」と悩んだパパへ|仕事だけではない人生の考え方」も参考にしてください。
夫婦の希望が同じでなくてもいい
夫婦で話してみると、仕事や家庭について考えていることが違う場合もあります。
夫は家族との時間を増やしたい。
妻は今の仕事でもう少し挑戦したい。
もちろん、その逆もあります。
夫婦だからといって、仕事と家庭について同じ価値観を持っている必要はありません。
大切なのは、どちらが正しいかを決めることではなく、
「自分は何を大切にしたいのか」
「相手は何を大切にしたいのか」
「どこなら調整できるのか」
「どこは変えたくないのか」
をお互いに知ることです。
目指すのは価値観を一致させることではなく、違いがあることを分かったうえで、実際の生活として成立する形を探すことだと思います。
家庭への貢献は「収入か、家事・育児か」の二択ではない
家庭への貢献を考えるとき、収入はとても分かりやすいものです。
金額で表せるため、夫婦のどちらが多く稼いでいるかもすぐに比較できます。
一方で、家庭を動かすためにしていることの中には、数字で表しにくいものがあります。
食事を作る、洗濯をする、子どもを迎えに行くといった家事・育児だけではありません。
「明日の保育園の持ち物は何か」
「予防接種をいつ予約するか」
「子どもが熱を出したら、今日はどちらが仕事を抜けるのか」
「来週の行事に合わせて仕事をどう調整するか」
といったことも、日々の生活では必要になります。
ただし、こうしたことを担っていれば、収入を考えなくていいという話でもありません。
家庭には、生活を維持するために必要なお金があります。
収入と家事・育児のどちらが大切かを比べるのではなく、どちらも家庭を成り立たせるための要素として考える。
そうすると、
「自分は妻より稼いでいないから、夫として十分ではない」
あるいは、
「妻のほうが稼いでいるから、自分は家事や育児をすべて引き受けるべきだ」
という二択から少し離れられます。
妻が高収入の家庭で夫が育児を担うという選択|「男は稼ぐべき」に縛られない働き方でも書いているように、夫が育児を多く担うことは一つの選択肢です。
ただ、それも収入差だけで自動的に決まる役割ではありません。
今の分担をずっと続ける必要もない
家庭に合う形は、ずっと同じとは限りません。
育休中と復職後では、生活の時間割が変わります。
保育園に通い始めれば送迎が必要になります。
子どもの体調不良が続く時期もあります。
夫婦のどちらかに異動や繁忙期があれば、それまでと同じ分担では回らないこともあります。
だから、今決めた役割を数年後まで固定する必要はありません。
たとえば、妻の仕事が忙しい数か月は夫が送迎を多めに担当し、その後、夫の仕事が忙しくなれば分担を見直すという形もあります。
毎日、家事や育児を同じ量にすることだけが分担の方法ではありません。
その時々の仕事や家庭の状況を見ながら、長い期間の中で調整していく考え方もあります。
「夫の役割」「妻の役割」と固定するより、
今の家庭を回すために、今は誰が何を担うのか
と考えたほうが、状況が変わったときにも見直しやすくなります。
二人だけでは整理しにくいときは
夫婦で話していても、
仕事、収入、育児、住む場所、これからのキャリア。
いくつもの話が重なると、何について悩んでいるのか分からなくなることがあります。
そんなときは、いったん問題を分けてみます。
会社の制度について分からないのか。
夫婦の役割について話したいのか。
自分自身がこれからどう働きたいのか整理できていないのか。
問題が違えば、相談する相手も変わります。
夫婦だけで答えを出しにくいからといって、誰かに家庭の正解を決めてもらう必要はありません。
第三者に話すことで、自分たちが何について迷っているのかを整理する方法もあります。
相談先については、育休中に人生に悩んだら誰に相談する?パパが話せる相手と相談先を整理で、悩みの内容ごとに整理しています。
まとめ
妻のほうが稼いでいる家庭で、「夫の役割は何か」と考えても、一つの答えは出ません。
そもそも、最初に夫の役割を決める必要もないと思います。
先に考えたいのは、
「自分たちは、どんな生活をしたいのか」
ということです。
そのために必要な収入はどのくらいか。
誰が何時に子どもを迎えに行けるのか。
急な呼び出しにはどう対応するのか。
妻はどんな仕事を続けたいのか。
夫はどんな働き方をしたいのか。
そうした条件を一つずつ整理したあとで、誰が何を担うのかを考える。
「夫だから何をするか」でも、「収入が少ないから何をするか」でもなく、その家庭を成り立たせるために何を担うか。
そして、その答えもずっと同じである必要はありません。
子どもの成長や夫婦の仕事が変われば、家庭に必要な条件も変わります。
今の自分たちに合う形を考え、状況が変わったらまた見直す。
そのほうが、「夫の役割」という一つの型に自分を当てはめるより、自分たちの家庭に合った形を考えやすくなると思います。
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