「メーカー勤務に役立つ資格は?」と調べてみると、さまざまな資格が候補として出てきます。ただ、この問いに誰にでも当てはまる一つの答えを出すのは難しいところです。メーカーには、研究・開発、設計・技術、製造・生産技術、生産管理、品質管理・品質保証、営業、マーケティング、知的財産、管理部門、IT・データ活用など、非常に幅広い職種があります。全員に共通しておすすめできる資格を一つに決めることは、現実的ではありません。
「メーカー勤務」という一つの括りの中に、実際にはまったく異なる仕事内容が含まれているためです。同じ会社の中でも、部署が違えば必要な知識は大きく変わります。
転職を考えた会社員パパが資格を取るなら?これまでの業務経験から考える資格の選び方や実務経験がある分野の資格を取る意味はある?会社員のキャリアで考えるメリットでも触れてきたように、資格を選ぶときは、「メーカー勤務だから何を取るか」ではなく、「自分がこれまでどんな業務を経験してきたか」「これからどんな仕事をしたいか」から考えることが大切です。この記事では、その考え方をメーカー勤務の会社員向けに、もう少し具体的に整理していきます。
- まず「職種」ではなく実際の業務まで分解する
- 研究・開発の経験がある人が考えられる資格・学習テーマ
- 製造・生産技術・生産管理の経験がある人が考えられる資格・学習テーマ
- 品質管理・品質保証の経験がある人が考えられる資格・学習テーマ
- 営業・マーケティングの経験がある人が考えられる資格・学習テーマ
- 知的財産・管理部門の経験がある人が考えられる資格・学習テーマ
- IT・データ活用に関わる人が考えられる資格・学習テーマ
- 職種・業務経験別の学習テーマを一覧で整理
- 転職のために資格を取るなら、先に求人を確認する
- 子育て中なら「取れる資格」より「使う資格」を選ぶ
- 資格を決めたら「どう学ぶか」も考える
- まとめ|メーカー勤務だからではなく、自分の経験から資格を考える
まず「職種」ではなく実際の業務まで分解する
同じ「研究職」「営業職」「品質職」という肩書きでも、会社や扱う製品によって、実際の仕事内容はかなり異なります。
たとえば営業といっても、顧客との価格交渉が中心の場合もあれば、技術提案がメインの場合、売上分析や契約関連の業務が多い場合、海外顧客への対応が中心の場合、新規市場の調査を担当している場合など、内容はさまざまです。資格や学習テーマを考えるときは、肩書きだけで判断せず、自分が実際に何を担当してきたかまで分解してみることが出発点になります。
品質職や研究職についても同じことが言えます。同じ「品質管理」という肩書きでも、検査業務が中心の場合もあれば、工程改善やクレーム対応、規格対応が中心の場合もあります。自分が実際にどの業務に多くの時間を使ってきたかを振り返ってみると、学びたいテーマが見えやすくなります。
研究・開発の経験がある人が考えられる資格・学習テーマ
研究開発の仕事内容によっては、特許や知的財産に関わることがあります。自社の技術を守るための考え方や、他社の特許を確認する視点が必要になる場合もあります。こうした経験がある場合、知的財産について体系的に学べる「知的財産管理技能検定」が学習テーマの候補になり得ます。
また、研究データを扱う業務では、統計的な考え方に触れる機会もあります。実験データの分析やばらつきの評価などに関わってきた方であれば、「統計検定」で統計の基礎を体系的に学び直すという選択肢も考えられます。
このように、「今の仕事で何に関わっているか」から「何を学びたいか」を考え、そのうえで資格の候補を見ていく、という順番がおすすめです。
製造・生産技術・生産管理の経験がある人が考えられる資格・学習テーマ
製造や生産技術、生産管理の仕事では、品質、安全、設備、データ活用など、さまざまな知識が関わってきます。
品質に関する業務経験がある場合は、「QC検定(品質管理検定)」が学習テーマの候補になります。また、扱っている物質や設備によっては、「危険物取扱者」のような資格が業務に関連してくる場合もあります。ただし、これは「製造業だから必ず取るべきだ」というものではなく、実際に扱う物質や設備、担当業務によって必要性が変わってきます。危険物取扱者は甲種・乙種・丙種で試験の対象や受験資格などが異なるため、検討する場合は消防試験研究センターの最新情報を確認してください。
生産管理の視点から数値やデータを扱う機会が多い方であれば、統計やデータ分析についての学習も、実務経験とつながりやすいテーマの一つです。
品質管理・品質保証の経験がある人が考えられる資格・学習テーマ
品質管理と品質保証は、会社や業界によって担当範囲が異なる場合があるため、同じ仕事として一括りにはできません。ただ、どちらの業務でも、品質や統計の知識、関連する法規・規格への理解が求められる場面があります。
「QC検定」や「統計検定」は、こうした業務経験と関連づけて学びやすいテーマの一例です。なお、品質保証の業務でISOに関わってきた方もいると思いますが、「ISO資格」という言い方は少し曖昧です。ISO規格そのものの理解、内部監査員研修、審査員資格などは、それぞれ性質が異なるため、自分が実務でどの部分に関わってきたのかを踏まえて、必要な学習内容を確認することをおすすめします。
営業・マーケティングの経験がある人が考えられる資格・学習テーマ
営業の経験があり、顧客企業の数字や自社の収益構造を理解したいと感じている場合は、「日商簿記検定」などを通じて会計の基礎を学ぶという選択肢があります。営業成績や取引条件を、より数字の面から理解できるようになりたい、という目的に合う学習テーマです。
マーケティングの業務で、市場データや販売データを扱う機会が多い方であれば、「統計検定」を通じて統計的な考え方を体系的に学ぶ、という方向性も考えられます。海外顧客とのやり取りが多い場合は、英語を学び直したり、その力を確認する一つの手段としてTOEIC L&Rを活用したりする方法もあります。
いずれも、「営業なら簿記を取れば評価される」というものではありません。あくまで、その資格や学習内容を、自分の仕事の中でどう使いたいかを考えることが大切です。
知的財産・管理部門の経験がある人が考えられる資格・学習テーマ
知的財産の業務に携わっている場合は、「知的財産管理技能検定」が学習テーマの候補になります。級によって求められる知識の範囲や、受験に必要な条件が異なるため、公式情報を確認しておくとよいでしょう。
経理や管理部門の業務経験がある場合は、簿記・会計、労務、ITなどが学習候補になり得ます。ただし、「管理部門」と一括りにしても、経理、人事、総務、法務など担当業務によって必要な知識は異なります。人事・労務系の資格に関心がある場合も、資格を取得すればその職種に必ず就けるというものではないため、実際の求人や社内の要件を確認しながら検討することをおすすめします。
IT・データ活用に関わる人が考えられる資格・学習テーマ
メーカーの中でも、業務改善、DX推進、データ分析、システム導入などに関わる機会がある方もいると思います。こうした業務経験がある場合は、「ITパスポート」や「基本情報技術者試験」でITの基礎を体系的に学ぶ、あるいは「統計検定」でデータの見方を学ぶ、という選択肢が考えられます。
ただし、「これからはDXの時代だから、全員がIT系の資格を取るべきだ」ということではありません。Pythonなどのプログラミングに関心がある場合は、資格取得という形にこだわらず、実際に手を動かしながら学ぶという方法もあります。
職種・業務経験別の学習テーマを一覧で整理
ここまでの内容を、業務経験別に整理すると以下のようになります。
| 業務経験 | 学習テーマ | 資格・検定などの例 |
|---|---|---|
| 研究・開発 | 知財、統計、データ分析 | 知的財産管理技能検定、統計検定など |
| 製造・生産技術 | 品質、安全、IT | QC検定、業務に応じた安全関連資格など |
| 品質管理・品質保証 | 品質、統計 | QC検定、統計検定など |
| 営業 | 会計、英語、IT | 日商簿記検定、ITパスポートなど |
| マーケティング | 統計、データ分析、会計 | 統計検定、日商簿記検定など |
| 知的財産 | 知財・法律 | 知的財産管理技能検定など |
| 管理部門 | 会計、労務、IT | 日商簿記検定、業務に関連する資格など |
| IT・データ活用 | IT、統計、プログラミング | ITパスポート、基本情報技術者試験、統計検定など |
これは「この職種ならこの資格を取るべきだ」という推奨一覧ではありません。あくまで、自分の業務経験から学習テーマを考えるための一例として参考にしてください。
転職のために資格を取るなら、先に求人を確認する
転職を目的として資格を考えている場合は、「資格を取ってから求人を見る」のではなく、「求人を見て、必要な経験・知識・資格を確認し、必要であれば学ぶ」という順番も検討できます。
必須資格として記載されているのか、歓迎条件として記載されているのか、そもそも資格の記載がなく実務経験のほうが重視されているのかによって、資格の必要性は変わってきます。メーカー転職を検討している場合は、メーカー勤務のパパが転職を考えたときの選択肢|経験を活かすか、異業種へ行くかやタイズとメーカーズジョブを比較|メーカー転職ではどう使い分ける?も、あわせて参考にしてみてください。
子育て中なら「取れる資格」より「使う資格」を選ぶ
資格の一覧を見ていると、「短期間で取れそう」「難易度が低そう」「有名だから」という理由で選びたくなることもあると思います。ただ、子育て中は学習時間も限られているため、「取れるかどうか」だけでなく、「取った後、その知識をどこで使うのか」まで考えておくことをおすすめします。
現在の業務、社内異動の可能性、将来担当したい仕事、転職先の候補など、取得後の使い道とのつながりまで考えておくと、「何のために学ぶのか」を整理しやすくなります。また、資格の勉強のために、育児や家庭生活を一方的に配偶者へ任せることを前提にしないようにしたいところです。夫の学習のために妻の仕事やキャリアを調整することを当然とせず、家庭全体で無理のない形を考えることが大切です。
資格を決めたら「どう学ぶか」も考える
学びたい資格や学習テーマの方向性が見えてきたら、次は独学、オンライン講座、通学、会社の研修や制度など、どのように学ぶかを考える段階に進みます。
「資格が決まったらすぐに講座を申し込む」のではなく、まずは独学でどこまでできそうか、講座を利用する意味がどこにあるのかを考えてみることも大切です。学び方の具体的な比較については、別の機会にあらためて整理したいと思います。
まとめ|メーカー勤務だからではなく、自分の経験から資格を考える
メーカーには多様な職種があるため、「メーカー勤務におすすめの資格」を一律に決めることは難しいものです。まずは自分の実務経験を見直し、その仕事をさらに深めたいのか、周辺領域を広げたいのかを考えてみてください。
資格名から入るのではなく、「何を学びたいか」を先に考えることが大切です。転職を目的とする場合は、資格を取る前に求人から必要性を確認する方法もあります。そして何より、資格取得そのものをゴールにせず、その先でどう使うかまで考えておくことも、資格を選ぶうえで大切な視点です。
学びたい資格やテーマの方向性が決まったら、次は独学で学ぶか、講座を利用するかを考える段階に進みます。
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