転職やこれからのキャリアについて考え始めると、「何か資格を取った方がいいのだろうか」と思うことがあります。求人サイトを見ていると、資格やスキル、経験といった言葉が目に入り、「今の自分には何もないのではないか」「何か資格を取らなければ」という気持ちになることもあるかもしれません。
ただ、会社員として働いてきた方には、すでに日々の業務を通じて積み重ねてきた経験があります。新しい資格を探す前に、まずはその経験を見直してみることが、案外大切な一歩になります。資格を取ること自体を否定するわけではありませんが、「何を学ぶか」を決める前に、「自分は何を経験してきたか」を確認しておくと、選び方の軸がはっきりしてきます。
結論からいえば、転職を考えたからといって、すぐに資格を取る必要があるとは限りません。まず確認したいのは、これまでの仕事で何を経験してきたのか、そして次のキャリアで何をしたいのかです。そのうえで、足りない知識を補う手段として資格を考えると、学ぶ目的が見えやすくなります。
資格より先に「これまで何をしてきたか」を整理する
「営業部にいた」「製造部門にいた」というような所属だけでなく、実際にどんな業務を担当してきたのかを、もう少し細かく分解してみることをおすすめします。
研究・開発、製造、生産管理、品質管理・品質保証、営業、マーケティング、知的財産、経理・財務、人事・労務、IT・データ分析、プロジェクト管理、顧客対応、社内調整など、日々の仕事の中には、意識していなくても積み重なってきた経験があります。子育て中の会社員パパは何を学ぶ?キャリアにつながる資格・スキルの選び方でも触れたように、今の経験を活かせる学び方を考えるうえで、まずは自分が実際に何をしてきたのかを言葉にしてみることが出発点になります。
「実務経験+資格」という考え方
資格を単体で捉えるのではなく、これまでの実務経験と組み合わせて考えてみると、選び方が見えやすくなります。
たとえば、営業の経験に会計やマーケティングの知識を重ねる、品質管理の経験に統計の知識を重ねる、研究開発の経験に知的財産やデータ分析の知識を重ねる、管理部門の経験に労務や法律の知識を重ねる、といった形です。今までやってきたことの周辺を体系的に学び直す、という考え方です。
ただし、特定の資格を取得すれば必ず転職に有利になる、というわけではありません。あくまで、これまでの実務経験に関連する知識を体系的に学び直したり、自分の経験を整理したりするための一つの手段として考えておくとよいでしょう。面接や履歴書で自分の経験を説明するとき、体系立てた知識があることで、話しやすくなると感じる方もいるかもしれません。
資格を選ぶときの3つの方向性
資格を選ぶ方向性は、大きく3つに分けて考えることができます。
一つ目は、今の仕事を深める資格です。現在担当している業務について、より体系的に理解するための学びです。二つ目は、今の仕事の周辺領域を広げる資格です。研究の経験に知財の知識を加える、営業の経験に会計の知識を加える、といったように、隣接する分野に視野を広げる学び方です。三つ目は、将来やりたい仕事につながる資格です。今後担当したい仕事や、転職先で目指したい仕事がある場合の学びです。
ただし、資格を取ったからといって、未経験の職種へ必ず転職できるというわけではありません。あくまで、目指す方向に近づくための一つの材料として考えておくことが大切です。3つの方向性のどれか一つに決めなければならないわけでもなく、複数を組み合わせて考えることもできます。
人気資格だからという理由だけで選ばない
「おすすめ資格ランキング」のような情報を見て、そのまま何を学ぶか決めてしまうこともあるかもしれません。ただ、資格には、学習にかかる時間、受験費用や講座費用、更新にかかる手間、実務で使える場面、自分のキャリアとの関連性など、それぞれ異なる特徴があります。
人気があるかどうかよりも、「自分はなぜこの資格を取りたいのか」を、自分の言葉で説明できるかどうかを大切にしてみてください。この問いにすぐ答えが出なくても構いません。むしろ、答えを考えていく過程そのものが、自分のキャリアを整理する機会になることもあります。
資格取得の目的を決める
資格を選ぶ前に、「何のために取るのか」を整理しておきたいところです。
- 今の仕事への理解を深めたい
- 社内異動の選択肢を考えたい
- 転職するときに自分の知識を説明しやすくしたい
- 将来担当したい仕事の基礎を学びたい
- 自分のキャリアを整理するきっかけにしたい
目的によって、選ぶ資格や学ぶ内容は変わってきます。
子育て中だからこそ「勉強時間に見合うか」を考える
子育て中の会社員は、仕事以外の時間をすべて自由に使えるわけではありません。資格取得には一定の時間がかかるため、「取れそうだから」ではなく、「この資格に時間を使う意味が、今の自分にあるか」を考えることが大切です。
家族との時間や育児を一方的に削って勉強時間を確保するのではなく、家庭の予定も含めて無理のない学び方を考えてみてください。「子育て中だから勉強を諦めるべきだ」という話ではなく、限られた時間の中で、本当に自分のキャリアに必要な学びなのかを見極めてから始める、という順番を意識することが大切です。具体的な時間の使い方については、後続の記事でもう少し詳しく扱う予定です。
資格が必要ない場合もある
求人や仕事内容によっては、資格よりも実務経験のほうが重視される場合もあります。資格を取る前に、求人票を見てみる、希望する職種の募集要件を確認する、社内で希望する部署に必要な知識を調べる、転職エージェントなどから情報を集めるといった方法で、本当に資格が必要なのかどうかを確認してみることをおすすめします。「とりあえず資格を取る」のではなく、必要性を確認したうえで学び始めるという順番が大切です。
すでに実務の中で身につけている知識であれば、あらためて資格という形にしなくても、職務経歴書や面接の中で十分に説明できる場合もあります。資格はあくまで選択肢の一つであり、必須のステップではありません。メーカー勤務の方であれば、メーカー勤務のパパが転職を考えたときの選択肢|経験を活かすか、異業種へ行くかやタイズとメーカーズジョブを比較|メーカー転職ではどう使い分ける?で、実際の求人情報から必要な知識を確認する方法にも触れています。
迷ったら「これまでの経験」から資格候補を探してみる
自分の業務経験から学習テーマを考える際の例として、以下のような整理の仕方があります。
| これまでの業務 | 学習テーマの例 |
|---|---|
| 研究・開発 | 知財、統計、データ分析など |
| 品質管理・品質保証 | 品質管理、統計など |
| 営業 | 会計、マーケティングなど |
| マーケティング | 統計、データ分析、会計など |
| 知的財産 | 知財・法律関連など |
| 管理部門 | 会計、労務、法律など |
これは「この仕事ならこの資格を取るべきだ」という表ではありません。あくまで、自分の業務経験から学習テーマを考えるための一例として参考にしてください。実際には、これまで複数の業務を経験してきた場合もあるでしょう。その場合は、今一番学びたいと思えるものから手をつけてみるのも一つの方法です。
まとめ|新しい資格より、まずこれまでの経験を見る
資格を探す前に、まず自分がこれまで何をしてきたのかを見直してみることをおすすめします。資格は、これまでの経験を否定して新しい自分になるためのものではなく、今まで積み重ねてきた経験を整理し、次につなげるための一つの手段として使うこともできます。
妻が高収入でも自分のキャリアを諦めたくない夫へ|スキルアップという選択肢でも触れたように、転職する場合にも、今の会社に残る場合にも、こうした振り返りは自分のキャリアを考える材料になります。焦って何かを始める必要はなく、まずは自分の経験を棚卸しすることから始めてみてください。
何を学ぶかの方向性が見えてきたら、次は「実務経験がある分野の資格を取ることに、どんな意味があるのか」をもう少し掘り下げて考えてみましょう。
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